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Aさんのがん、生きること、働くこと

女性のガン、働くこと-乳がん
⑴脱毛について(抗がん剤治療の副作用)
Aさんは45歳女性です。空港の近くにあるホテルの事務として勤務しています。
家族は夫、小学生の子供が2人、近隣にご自身の両親がお住まいです。
Aさんが43歳のときに会社の健康診断の結果から、乳がんの疑い有り、と分かりました。
乳腺外来を受診し、結果はステージⅡの乳がんでした。

Aさんの会社には社員用の健康管理室はありませんでした。会社が産業保健を外部に委託していました。そこは病院が併設された健康管理センターでした。Aさんが最初にガンの疑いがある、とされたときには産業医と産業保健師から健康診断結果の説明を受けていました。Aさんが一番心配だったことは、仕事を続けながら治療ができるのかどうかでした。お金がなければ治療に専念できないことは知っていました。
外来の結果が出たあと、主治医からも産業医からも、治療は大変だが今の生活は可能な限り維持することが肝要です、と言われました。また仕事は休みながらでも辞めないことも強くすすめられました。
Aさんの病気のことは一部の上役のみが知るところとしました。そしてAさんが信頼している一部の同僚にはAさん本人が伝え何かあったときには助けをお願いしました。
Aさんは仕事を休みながら、外科的治療による病巣部摘を終えました。しかしながら、再発予防のため抗がん剤治療はしばらく続ける必要があると、主治医から言われました。
三週間に一度のペースで抗がん剤治療を外来で受けました。
Aさんの治療で使用した抗がん剤は副作用に、脱毛、手足のしびれなどが強くでるものでした。
Aさんが仕事に本格的な復帰をしてから気になったのは、脱毛でした。また他の副作用のこともどのように身体に現れるのかイメージ出来ませんでした。
その頃にAさんに産業保健師から連絡がありました。入院中に見舞いに訪れていた保健師でした。保健師からは治療のことは産業医にもその都度伝え必要の際には仕事を休むことや、仕事の調整について上役に産業医保健師から連絡すると言われました。Aさんは脱毛のことなど心配なことを保健師に伝えました。保健師からは、病院からも説明があったかもしれませんが、と確認の上、副作用を含め体調のことは毎日メモ書きするよう言われました。副作用には波があること、一定の現れ方があるため予測できるものもあること、外来治療してから3日間は仕事を短くしてもらうなど、予め上役に相談することを勧められました。Aさんは上手く上役に説明ができるかどえか心配な旨を伝えると、保健師から上役に説明をすることになりました。長期に渡る治療のため、治療期間の目安のこと、医療機関産業医が連絡を取り合うことなどを含め上役に説明してもらうことにしました。
そして一番気になっている脱毛については、まずはウィッグに合わせた髪の長さにカットしてはどうかと保健師から言われました。抗がん剤治療を始める前後に短めにカットしておき、ウィッグにしてもあまり変化を感じさせないようにしてはどうかと。また事前に練習して装着出来るようにともすすめられました。Aさんはあまり髪を短くするのは好みませんでした。しかし、フルウィッグは20万円以上しました。ロングのフルウィッグはさらに数万円上乗せされます。そのためロングのフルウィッグではなく、短めのフルウィッグを購入していました。
Aさんは髪を切ってウィッグに揃えました。そして事前にウィッグをつけ、助言のとおりスーパーなど出かけました。誰にも気付かれなかったようでした。会社の人はさすがに気付くだろうけれど、知らない人からジロジロ見られることはなく、Aさんはホッとしました。
そして治療がすすむと本格に脱毛してきました。鏡をみるのが怖くなりました。しかし家族からは、ウィッグが良く似合っていると褒められました。夫からは、抗がん剤治療が終われば髪は生えてくるとわかっているのだから、今はウィッグの力をかりよう、と言われました。Aさんは最初はウィッグをつけて外出することに抵抗がありましたが、会社の人から何を言われることもなく、堂々と仕事に専念しようと思うようになりました。
また、Aさんの住んでいる地域にはウィッグへの助成金が支給されることを知りました。Aさんは病院で申請に必要な書類をもらい、早速申請しました。1カ月ほどで支給されました(助成金の制度の有無はお住まいの自治体により異なります。医療機関、あるいはお住まいの保健センターなどご確認ください)。
Aさんはウィッグと上手く付き合いながら仕事を続けています。